土佐北川駅は、橋の上にある。
高架駅はいくらもあるが、川にかかる橋そのものが駅となっているのは珍しい。
このあたりの集落は、うっかり寝返りをうつと転げ落ちそうな山の急斜面にへばりついている。
そのような場所なので、駅をつくるには新たな人工土地を設けるしか無かったのだろう。
そして橋が駅になった。
この橋は汽車が吉野川支流穴内川を渡るためにあり、また汽車が停車する駅であり、そして人が岸から岸へと渡るための人道橋でもある。
この場所と遠い未知の世界を結ぶ鉄道、人が行き来する街道、川の流れとそこに生きる生き物たちの流れ、顔を上に向ければ天空を流れる雲・太陽・無数の星々。
一見なにも無いようなこの場所に、数えきれない旅が立体的に交差している。
輝き始める朝、光と影が踊る太陽の時間、闇に包まれていく夕べ。
この橋を渡り、この駅を行き来するものは、感じることができる。
橋は夢。
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